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漢方薬のすすめ

牛車腎気丸 (ごしゃじんきがん)

更新日:2016-4-1

夜何度も排尿で目が覚めると訴える方はたくさんおられます。たしかに夜、四回も五回も起きるのは辛いでしょう。そこで新聞やテレビでは多くのサプリメントが紹介されています。人によっては効くものもあるのでしょうが大部分はお金の割には効かないようです。

では漢方薬にはあるのかと問われると、必ずよく効きますよと言うほどのものはないというのが現実です。しかし中には「八味地黄丸2012年2月掲載」で3回が2回になったと喜んでおられる方もいます。この「牛車腎気丸」は「八味地黄丸」では効果不十分な人が目安です。
この薬は「八味丸」と非常によく似ています。「八味丸」も「牛車腎気丸」も附子剤といわれ、猛毒で有名な鳥兜(とりかぶと)が使われている薬です。「牛車腎気丸」は「八味丸」に牛膝(ヒユ科、ヒナタイノコズチの根)と車前子(おおばこ)を加えて、その作用を強力にした薬です。

「八味丸」を服用しているが、いま一つ効きが悪いと思っている方や、疲れやすい、足が冷える、尿の出が悪い、昼間も夜も尿の回数が多い、口が乾く等の症状がある方は一度この「牛車腎気丸」を使ってみては如何でしょうか。漢方の好きな多くの泌尿器科医が第一番目に処方する薬です。

二朮湯 (にじゅつとう)

更新日:2016-3-1

五積散(昨年10月号)は、ちょっとひ弱な人の痛みの薬でしたが、この薬は体力中等度の人の痛みの薬です。
筋肉にしまりのないような人・太り気味で胃腸があまり丈夫でない人が痛みを訴えたときに用います。五十肩(七十になっても五十肩です)、頸腕症候群の特効薬と言われています。上腕や前腕の痛みなどを訴えたときによく用います。しかし肩だけでなく腰や膝の痛みの場合にもいいようです。

成分は白朮(びゃくじゅつ)、蒼朮(そうじゅつ)の二つの朮(おけら科)を含んでいます。二朮湯の名前の由来になっています。さらに威霊仙(いれいせん・キンポウゲ科サキシマボタンズル根と根茎)、天南星(てんなんせい、まむし草)など珍しい成分を含んでいます。
葛根湯も肩こりにはよく効きますが葛根湯では胃腸症状が強くて飲めない人に投与して喜ばれたことがあります。

二陳湯(にちんとう)

更新日:2016-2-1

吐き気(悪心)や嘔吐を治める薬です。
胃に水分の停滞があって気持ちが悪くなり吐き気や嘔吐があり、さらにめまいや動悸がしたりするときに用います。風邪の引きはじめや、終わった後になんとなくむかむかして胃のあたりの不快感が長くとれないことがあります。そういうときに効く薬です。

また痰が多い咳に著効とも言われています。二日酔いの特効薬だと思っている患者さんもいます。つわりの、むかむかに使っている先生もおられます。精神科の先生は気うつやノイローゼの患者さんに投与すると言っています。
成分は半夏(精神を落ち着かせる作用)、茯苓(さるのこしかけ科・鎮痙作用)、陳皮(みかんの皮・中枢神経を抑制する作用)、甘草、乾姜(乾燥させた生姜・鎮静、鎮吐作用)です。
むかむかする急性の疾患だけでなく、なんとなく胃のあたりがスッキリしない方は普通の胃の薬として使用することもできます。

小柴胡湯(しょうさいことう)

更新日:2016-1-1

最近、この薬を「風邪がなかなか抜けない、いつまでもだるく、なんとなく元気がでない」という人に使用したところ「とてもよくなった、一日服用しただけで元気がでた」とたいそう喜ばれましたのでご紹介します。

この薬は中国の古い医学書傷寒論に掲載されている有名な薬です。江戸時代には急性の気管支炎によく使用したようです。かぜが長引いたり慢性の疾患があって全身がだるい、なんとなく食べたくない、口が苦い、吐き気がする、めまいがするなどいう症状があるときに短期間用いる薬です。また発熱と悪寒が交互に現れたり、みぞおちから左右の季肋部にかけて重苦しく抵抗があるような状態の時に用います。決して巷でいうような慢性肝炎の薬ではありません。そういう飲み方をすると副作用で大変なことになります。

成分は柴胡(芹科のみしま柴胡の根)、半夏(サトイモ科のからすびしゃく)、生姜、人参、黄芩(シソ科。コガネバナの周皮を除いた根)など七つの成分からなっています。体格ががっしりしていれば大柴胡湯です。体力がかなり落ちている方は柴胡桂枝湯がいいでしょう。

十味敗毒湯 (じゅうみはいどくとう)

更新日:2015-12-1

漢方にも皮膚病の薬が幾つがありますが、この薬は有吉佐和子の小説「華岡清州の妻」の華岡清州(江戸時代の医師)が作ったとされる「十味敗毒湯」です。

本来は湿った湿疹に有効な処方ですが、頑固な「じんましん」や「かゆみ」にも有効です。最近ではアレルギー体質の改善に用いられます。これは、その成分である桔梗(ききょう)や桜の皮等が痒み止めとなり、茯苓(ぶくりょう)というサルノコシカケ科に属する茸の一種が皮膚の局部の浸出液を去るなどの複合作用によるものでしょう。長い間、かゆみや湿疹でお困りの方は一度この漢方薬を試されてみるのはどうでしょう。

ひび割れ、肌荒れに著しくよく効いた例をご紹介します。60歳女性。冬になると手にひび割れが出来て、指はいつも血が滲んでいる状態だと言います。肌は荒れるし、冬は最悪だそうです。この人に十味敗毒湯を投与しました。一ヶ月後に、嬉々として来院しました。「先生、指のあかぎれ、出血が全くでません。こんな事は初めてです。この症状に悩まされてもう十数年になるのです。主人が転勤族ですから、日本中、いろいろな所に住みました。その都度、その土地の病院で診て貰うのですが全部ダメでした。もう何カ所行ったか分からないほどです。それがこの診療所で一回で治ったのです。」と大変に感謝されました。その方は、毎年冬になると、この薬をとりにみえます。よっぽど効くのでしょうね。

腕や胸の「しみが薄くなった」と喜ばれた患者さんもありました。成分は桔梗、桜皮、乾姜(乾かしたしょうが)、独活(うど)など十種類で構成されています。

乙字湯(おつじとう)

更新日:2015-11-1

「痔」という病気も多いものです。やまいだれの中に寺という字が「痔」です。冷たいところで長時間座禅の修行に励むお坊さん方に多かった病なのでしょう。口から始まる消化管の一番末端の肛門の疾病です。

いぼができたり、脱肛(直腸が飛び出てくる)したり、出血したり、疼痛をともなったりします。昔も今もつらい疾病です。漢方薬 にも様々な痔疾の薬があります。「乙字湯」はその中でも代表的なものです。

この薬は体力が中程度で、痔があって便秘するものによく用いられます。激しい症状はないが痔の痛みがある人にむくようです。大黄という下剤そして当帰、甘草など6つの成分でできています。
この薬は江戸時代、水戸藩の軍医、「原 南陽」という人が作ったものです。水戸藩といえば黄門様。そこで肛門の薬を作ったのでしょうか。みなのものしずまれしずまれー。これをみよ。この薬をなんとこころえるか。乙字湯であるぞよ。

五積散 (ごしゃくさん)

更新日:2015-10-1

ちょっとひ弱な感じのする人で、下腹部の痛み、腰の痛み、膝などの関節の痛み、あちこちの神経痛などを訴える時に用います。
腰痛の特効薬などと書かれている本もあります。寒冷や湿気で痛むものによいというので最近では冷房病の際にもよく用います。また冷たいものを食べて起こる腹痛や下痢、食欲不振にも用います。関節の痛みの薬ですから肩こりにも用います。

五積散というのは体内に鬱積した五つの病毒、すなわち気、血、痰、寒、食の病毒を治すという意味でつけられました。私は腰や膝の痛みなどあちこちの痛みを訴える方に使用しています。しかし、更年期障害や、リューマチ、老人の軽い感冒、気管支喘息、慢性胃炎、不眠症等々、もっとたくさん処方されてもいいような漢方薬だと思います。

処方は複雑で、陳皮(ミカンの皮)、生姜(しょうが)、桔梗、芍薬など18種もの生薬が使われています。腰痛でお困りの方、試しに飲んでみてはいかがでしょう。

真武湯(しんぶとう)

更新日:2015-9-1

この薬は、新陳代謝が衰えていて体力がなく、生気がうすれ、動悸やめまいがする、身体がふらふらする、冷え性で手足が冷えやすく、腹痛や下痢を起こしやすい、また、身体や手足が重たく感じられ、長く起きていられずに寝てばかりいるといった状態の人に用います。

脈をみてみると、力なく、浮いているような感じがします。体力が衰えみるからに弱々しい感じがする人の薬です。こういう人は、風邪の時に熱はあるが、冷やすことを嫌がる傾向にあります。身体を温めると気持ちがよく、食べ物も温かいものを好みます。めまい・メニエル症の薬として漢方薬の好きな耳鼻科の先生方は愛用しています。虚弱な人の血圧の薬、心臓の薬、脳卒中後の薬、リュウマチの薬として処方されることもあります。

成分はトリカブトの附子(ぶし)、芍薬(立てばしゃくやく座ればぼたんのしゃくやく)、生姜(しょうが)、茯苓(ぶくりょう。きのこ)、朮(じゅつ。おけらという植物)の五種で構成されています。
私は貧血の薬として時々処方しています。中国二千年の、歴史のある良い薬だと思います。これ飲むと眠れるんですよと睡眠薬として愛用されている方もおられます。漢方薬の効き方は人それぞれですね。

大建中湯(だいけんちゅうとう)

更新日:2015-8-1

この薬は外科の先生方が好きな薬です。
大腸や胃など、腹部の手術をした患者さんの術後の腸閉塞を予防し、腸の動きをよくする目的で使われています。本来は発作性の激しい腹痛、腸の蠕動亢進のあるものに用います。腹が冷えて痛み、腸がぐるぐると動くのを自覚するような症状、おなかの膨満感がある人に使います。そこで腹部の手術後で、腸の動きが悪いときに、腸の動きをよくするという目的で使うという使い方もいいのではないでしょうか。人前でおなかがぐるぐる鳴って困るという方に処方して大変喜ばれたことがあります。

また、胃薬としてはこれが最高ですと言う方もおられます。その方は、いろいろ胃薬を飲んでみたがこの薬が自分には一番合うと言って、半年に一回診療所に来られます。毎食、毎日服用するのではなく、胃の具合が悪いときだけ服用するそうです。どの胃薬もいまいちという方に処方してみますと、みなさん良い薬ですねといいます。

成分は山椒(さんしょう)、乾燥させた生姜(しょうが)、朝鮮人参の三種です。それに膠飴(水飴)を加えています。非常に単純、明快な構成です。この単純明快な組み合わせが胃腸に良いのでしょう。

小建中湯(しょうけんちゅうとう)

更新日:2015-7-1

夏ばての季節がやってきました。夏ばてと聴けば「清暑益気湯」「補中益気湯」が代表的な漢方薬ですが、この「小建中湯」もなかなか良い夏ばて防止薬です。

本来は虚弱な小児の体質改善薬として小児科の先生方に愛されている薬ですが、疲れやすい、寝汗、微熱、食欲不振、神経過敏等の症状があれば大人、老人にも投与します。消化器の働きを助けて、全身の新陳代謝を改善し、体力増強、疲労回復に役立ちます。そこで夏ばて予防にも効くというわけです。

尿の回数の多い方、足がほてってお困りの方に投与して感謝されたことがあります。下痢が続いて体力の低下した90歳のご老人に投与して喜ばれたこともあります。
「小健中湯」は虚弱体質の方の風邪薬「桂枝湯」の中の芍薬の量を増やし、さらに膠飴(お米の飴)を加えたものです。成分には芍薬をはじめ甘草、生姜など5種類の植物がつかわれています。毎年夏ばてでお困りの方、一度試されてはいかがでしょうか。

五苓散(ごれいさん)

更新日:2015-6-1

口が渇(かわ)くという症状があります。加齢(年齢)に伴う症状のひとつということができます。歳だと言ってしまえばそれまでですが、ご本人にとっては辛い症状です。漢方では喉が渇いて水を飲みたくなるのを口渇と言います。飲まなくても口を湿らすだけでいいものを口乾と言っています。

そのどちらにも代表的な漢方薬に「五苓散(ごれいさん)」があります。五苓散は身体の水のバランスを整えるはたらきがあります。口渇も口乾も水のバランスが崩れたために起こる症状と考えています。身体の中の水のバランスが崩れている状態が使用の目安となっています。

そこで、どこが悪いというのではないのに脚がむくんだり、手が腫れたりする人にも用います。また水のバランスであるから膀胱炎になりやすい人、腎盂炎、腎臓の弱い人にも用います。めまい・偏頭痛も頭の中の水のバランスが悪いと考えてこれを用いることがあります。その他、急性・慢性の下痢症、二日酔い、乗り物酔い、暑気あたり、糖尿病などにも用います。乳幼児の突然の嘔吐、いわゆる自家中毒症の特効薬とされています。

成分は沢寫(みずくさ)、猪苓(さるのこしかけ科)、茯苓(サルノコシカケ科)、朮(おけら)、桂枝(くすのき科)の五つというきわめてシンプルな作りです。沢寫も猪苓も茯苓も、いずれも利尿作用がある生薬ですから、水のバランスによく効くのは当たり前でしょう。

十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)

更新日:2015-5-1

慢性の疲れ、病後の薬として補中益気湯や人参養栄湯があります。
この十全大補湯は更に病が進行したような、見るからに弱々しい方に用いる薬です。子供さんから成人、老人まで、弱々しく衰弱の程度ははげしく、極端な言い方をすれば医者からさじを投げられたような状態の方に用います。昔の漢方薬の教科書にはこの薬で劇的に治ったというような症例が沢山載っています。よい薬が無かった時代には、この薬は魔法の薬だったと思います。

よい薬がたくさんある現代ですが、膠原病、難病、病名もつかないような、それでいてどんどんわるくなる疾病、さらに癌等々、たくさんの原因不明、治療方法のない疾病があります。年齢にも勝てません。そういう時に最後のたのみの薬として、この十全大補湯はまだまだ役に立つ薬だと思います。

極度に弱っている人の薬の様に書きましたが、普通の人でも、どうもだるい、疲れがとれないなどと感じている方は一度服用してみたらどうでしょう。成分は滋養強壮の代表である朝鮮人参を始め黄耆(おうぎ)、朮(じゅつ)、芍薬、甘草など十種の生薬で構成されています。


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